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Lust ①
2006 / 11 / 06 ( Mon ) 薄曇りの朝
男は湿った空気を払うように早足で入ってきた。 いささか乱れ開いた襟元を直しながらあたりを見回し カウンター内にただ独りで立つ女性店員に眼を留めると 男は女性の三つ斜め前の席に着いた。 その男は息を潜めながらAM9:50をちょうど指した時計に眼をやり それと同時に深いため息を吐き漏らし左腕のその時計を擦った。 眼前の女性をさりげなく上から下まで見える範囲でなめるように見た後、 「コーヒーをください」 と疲れのにじむ笑顔を付けて女性に言った。 【MITO AKIZUKI】 小さな銀のネームプレートを 男がみつめていた小さな胸元につけたその店員は 男の口元が注文の一瞬にだらしなく緩んだのを見逃さなかったが、 男が入ってきたときから変わらない微笑でただ応えるだけだった。 【Asmodée】と男の時計の文字盤にあるのをみたミト・アキズキは その男を「アスモデ」と自分の中で呼ぶことにした。 『みと・あきずきってどっちが名前なのだろうか』 アスモデは流し目で奥の席に誰もいないのを見てから 考えた。 湿った朝だった。 PR |
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